現場で生じる問題の真因を特定する
上司とのやりとり
社員研修の実施にあたっては、現場が抱えている問題を把握し、その問題を生じさせている原因を正確に特定することが重要です。
新入社員研修等の定期実施(定型型研修)のものはそれほど関係ありませんが、緊急的あるいは特定の問題に対して行う研修には原因の特定は、欠かすことができません。
先の例で言えば、上司の命令により、「モチベーション向上研修」を行ったとしても成果が出るとは限りません。
もう一つブレークダウンして、原因を正確に捉える必要があるのです。
具体的には、「なぜ、モチベーションが下がっているのか?」ということを考えなくてはなりません。
そのためには、現場の意見をしっかりと聴く、現場をしっかりと見るということが重要となります。
現場で起こっていることが会社の全てなのであって、その意味で会社は生き物なのです。
実際に現場を調査してみると、原因は次のようになっていました。
あなたの上司の思い込み | |
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問題 | 売上が芳しくない |
原因 | 営業マンのモチベーションダウン |
課題 | モチベーションを上げる |
解決策 | モチベーションアップの社員研修の実施 |
現場で実際に起きていること | |
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問題 | 売上が芳しくない |
原因 | 営業マンのモチベーションダウン |
真の原因 | 営業手法を知らない |
課題 | 営業手法の習得 |
解決策 | 営業力強化社員研修の実施 |
この会社では、不景気の影響を受け、人員の配置換えを行うことで、営業部門に多くの人材を割きました。
にもかかわらず、営業成果が一向に上がりませんでした。
それを見た上司は、営業に異動した社員のモチベーションが下がっている、と現場を見ずに思い込むわけです。しかし、実際には単純に営業の仕方が良く分からなかった、というだけのことなのです。
このような状況の中、上司の一声でモチベーション向上研修を行ったとしても成果は期待できません。
むしろ、営業の方法を知らないと嘆く社員にとっては逆効果でもあるわけです。
モチベーションは上がっても、何をすれば良いのか具体策が分かりません。これでは、ストレスが溜まる一方でしょう。
このような、現場を見ないために研修成果を上げることができない企業はとても増えています。会社は基本的に現場が全てなのですから、もっと現場の声に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。
それでも、中には現場の声をしっかりと聴いて研修を組んでいるのに、期待した成果が上がらないという企業も存在します。
このような場合は、現場の声にフィルターが掛かっていないかを慎重に吟味してみることが大切です。現場で働く社員というのは、良い報告は喜んでするのですが、悪い報告は基本的にしたがらないのです。
あなた
「なぜ売上が下がっているのですか?」
現場
「がんばっているのですが、お客様も不況でして・・・なかなか我々もやる気が出ません」
この問答によって、現場はモチベーションが落ちている、だからモチベーション向上研修だ!とやってしまうわけです。
これでは、現場の声を聞いたことにはなりません。
社員は景気などに責任を転嫁する傾向にあるのが常。
あなただって、何で?と聞かれれば何かに責任を転嫁したくなるでしょう。だからと言って、社員が悪いのではありません。これは、聞く側の質問のスキルの乏しさが原因なのです。
社員が抱えていることを聞くには、次のように質問すれば良いのです。
あなた
「売上が下がっているようですが、何に困っているのですか?」
現場
「実は営業の方法が教えられる人によって様々で頭が混乱してしまって・・・」
社員はあなたの敵ではありません。
だから、一緒に困っている原因を解決しようという姿勢が大切になるのです。
このように質問の仕方を変えることで、現場で生じていることをしっかりと把握することができるようになります。そして、その真の原因を解決することができる内容の研修を実施することで、大きな成果を期待することができるわけです。
現場をしっかりと見ること。
これは、現場の意見を五感を使ってしっかりと身体で聴くということを示唆しているのです。
そして、それを踏まえて、現場が抱えている問題を解決できる実践的な内容の研修を行うことが重要なのだといえます。